うつ病の注意点やあれこれ(家族歴、薬の副作用、後遺症など)
※医学の素人が書いた文章ですのであしからず
以前の記事を書いた際、こちらのガイドラインが凄くためになったので要所要所ピックアップしていきたい。
日本うつ病学会治療ガイドラインⅡ.うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害 2016
枠で囲ってあるところは原文そのまま抜き出した箇所で、図もすべてここから持ってきています。
診断
DSMのチェック項目以外でも注意すべき点
「症状に基づく操作的診断基準は、原因別である伝統的診断体系に比較して、原因を考慮した治療につながらない」といった批判がある。確かに、症状による診断に依拠する結果、診断の妥当性が低下し、1 つの診断区分に多様な病態が混在して、治療方針が立ちにくい。
この欠点を補うために DSM-5 では、
・精神障害(パーソナリティ障害群、神経発達症群を含む)の併存の有無
・身体疾患の併存の有無
・どのような心理社会的あるいは環境的な問題を有しているのか
・社会的機能が、どの程度損なわれているのか
といった点を意識的に把握することを求めている
(DSM-5, p.16-17)。
慎重にならないといけない場合
抑うつエピソードの診断基準を満たす精神症状を呈している患者に遭遇した際、「物質・医薬品誘発性抑うつ障害」(同 p.175-180)、「他の医学的疾患による抑うつ障害」(同 p.180-183)を鑑別することが優先事項である。さらに、身体疾患患者における抑うつ状態・うつ病の有病率が一般人口より高い(Evanset al, 2005)ことも考慮すれば、身体疾患の病歴および使用薬剤の聴取とあわせ、諸検査の必要性は高い。
併存する頻度の高い精神疾患
などの有無は、意識的に確認することが望まれる。
さらに幼小児期から存在する
- 自閉スペクトラム症
- 注意欠如・多動症
- 境界性パーソナリティ障害
についても検討する。
これらは病前のパーソナリティなどで判断する
病前の性格
患者の病前のパーソナリティ傾向として、外向的か内向的か、几帳面かどうか、周囲の人に気をつかってしまうタイプか(他者配慮性)、他人の評価を気にするか(対人過敏性)などに加え、元々明るく活発かどうか(発揚性)、気分の波があったかどうか(循環性)、出来事によって気分が変わりやすいかどうか(気分反応性)の確認は重要である。受診時点で「抑うつ症状」が見られる患者であっても、発揚性・循環性・気分反応性が元々強ければ、双極性障害の可能性も考慮する必要がある
治療
うつ病と環境の悪循環と補助
① 複数のストレスになる出来事が生じている(Kendler et al, 1998)時に、周りのサポートを十分受けられない環境(Wang, 2004)が重なる。
② さらに、十分な睡眠が取れず、脳の機能回復が不十分になる(Gillin, 1998)。
③ 脳は出来事を処理しきれず、機能不全が起きる。
④ 脳の機能不全は否定的な見方(物事の否定的側面ばかりを見てしまう)を引き起こす(Hirano et al, 2002)。
⑤ 否定的な見方によって、「周囲のサポートを過小評価」して、一人で問題を抱え込んでしまう。同時に、「負荷を過大評価」して、普段なら気にならなかったことまで「とても大変だ」と感じて、実際以上にストレスと感じる出来事が増えてしまう。さらに、不安が生じて、睡眠が取れなくなる。以上の結果、悪循環が形成されてしまうのがうつ病である
薬の副作用など
特に市販薬など買う人は注意
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)系
抗うつ薬の副作用で、併存身体疾患の悪化が起きる可能性にも注意が必要である。一例として、一部の抗うつ薬は、食欲を亢進させることがあるため、肥満や糖尿病の悪化につながりうる。薬剤選択の際に配慮したい。
不眠改善の睡眠薬に関して
BZD 系薬に関しては、依存性、認知機能障害、閉塞性睡眠時無呼吸症状の悪化、奇異反応などの可能性がある点に留意し、漫然と長期に投与することは避けるべきである(上述の 2 つの RCT でも、クロナゼパムの漸減中止をデザインに組み込んでいる)。また、BZD系薬の服用量が多い場合や、アルコールと併用した場合などは、奇異反応のリスクが高まる点にも注意する。
バルビツール酸系薬(合剤であるベゲタミンを含む)、ブロムワレリル尿素も、日本では依然として睡眠薬として処方されているが、依存性が強く、さらに自殺企図などで過量服用した場合、致死毒性に繋がる可能性の高い点も考慮して、原則として使用しない
素人のメモ
後遺症や再発
うつ病の患者の中には、抑うつエピソードを構成する諸症状が概ね軽快したかに思えても、以下に示す症状が残存(残遺)している場合がある。
◆ 中核的な抑うつ症状(抑うつ気分、興味・関心の消失、意欲低下、精神運動抑制、食欲減退、不眠、過眠)
◆ 非特異的な症状(不安、焦燥、痛み、認知機能障害)
これら残遺症状は、患者自身の主観的な回復感の有無(Zimmerman et al, 2012)や、患者の生活上の機能水準(Romera et al, 2013)に関係しており、また再発の予測因子でもある(Nierenberg et al, 2010)といった知見が提出されている。
ただし、残遺症状にどのような症状を含めるかは、各研究においてどのような症状評価尺度を使用したかによって異なり、コンセンサスにはいたっていない。
また、再発に関しては研究結果が一貫しておらずはっきりしたことは言えないのが現状。
*1:副腎不全は?